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トヨタのタンクとスズキのソリオ、この2台は間違えようのないライバル車です。
販売台数を見ると、トヨタのタンクシリーズが月間1万2千台強と、スズキの4千台弱の3倍以上を売り上げる圧倒的な販売台数を誇っています。
では、トヨタは、スズキより良いクルマだから売れているのか?
フフフ…… 私は知っています。
そこをこれから一緒に見てゆきましょう!
はじめに
↑スズキ ソリオ 引用:スズキ公式HP
↑トヨタ タンク 引用:トヨタ公式HP
兄弟車とは?
スズキは、ソリオ、ソリオバンディット、三菱デリカD:2の3車が同じクルマです。
トヨタは、タンク、ルーミー、ダイハツトール、スバルジャスティの4車が同じクルマです。
自社と同じ製品を他社のブランドとして製造すること。
クルマ、家電、食品などに多く見られる手法。
クルマ業界においては、自社のクルマの外装、車名などを変更して他社に供給することが行われている。
では、クエスチョンです。
このソリオとタンクという2車種、どのメーカーで開発してどこで造っているのかご存じですか?
正解は……
スズキのソリオは、100%スズキで開発・製造しています。
そして、トヨタのタンクは、ダイハツが開発してダイハツで造っているのです。
実質的な販売台数の比較
冒頭に、トヨタはスズキの3倍以上を売っている、とお話ししました。
しかし、トヨタの販売力はスズキよりはるかに強大なので、たくさん売れて当然です。
そんな比較、フェアじゃありませんよね。
公正を期すために、ソリオとタンク、それぞれの製造元であるスズキとダイハツだけの国内販売台数を比較してみます。
スズキとダイハツの国内総販売台数はそれぞれ87万台と65万台なので、販売規模はほぼ同じとみていいでしょう。
で、販売台数は……
スズキソリオ(含むソリオバンディット) 3642台
ダイハツトール 1511台
(2020/1調べ)
ソリオとタンク、どういう成り立ちなのか
↑スズキ ソリオ 引用:スズキ公式HP
↑トヨタ タンク 引用:トヨタ公式HP
2011/1 旧型ソリオ発売→人気が高まる
2014頃 ダイハツがソリオをターゲットにタンクの開発を始める
2015/8 新型ソリオ、満を持して発売
2016/11 トヨタタンク、遅れて発売
旧型ソリオはコンパクトカーの箱形というありそうでなかったジャンルで大人気となりました。
しかし、そんな状況を指をくわえて見ているトヨタではありません。
トヨタからダイハツに指令が出されました。
「スズキのソリオの対抗車種を造れ! 2年以内に! 」(私の想像です)
クルマの開発に2年というのは短かすぎる期間です。
しかし、ダイハツは頑張りました。
こうして出来上がったのがトヨタタンクのシリーズでした。
でも、結論が、「ダイハツの造った対抗車種はスズキを上回る素晴らしいクルマでした、パチパチ」とならなければ物語として完結しないわね。
さて、実際のところはどうなのでしょう。
いよいよ直接比較です!
ソリオとタンク、徹底比較!!
↑スズキ ソリオ 引用:スズキ公式HP
↑トヨタ タンク 引用:トヨタ公式HP
ボディサイズ
ソリオ 縦×横×高 3710㎜×1625㎜×1745㎜ 重量950~990kg
タンク 縦×横×高 3715㎜×1670㎜×1735㎜ 重量1100kg
このデータから読み取れるのは次の2点。
- タンクが完全にソリオをマークしているのがバレバレなほど似通ったサイズでありながら、幅をプラス45㎜広くして居住性を稼いでいること。
- ソリオの車重が150kgも軽いこと。
ただ軽くするのでなく、良質な鋼板を使って、肝心なところはガッチリ造ってある。
だから、フィーリングが安っぽくなってない。
この項目、サイズ感はイーブン。
車重は、軽いのにしっかりしているソリオの圧勝。
居住性
前席の居住性は両車ほぼ同等。
ソリオの前席足元の開放感は圧倒的。
タンクは、小柄な女性がシートを前に寄せたポジションを想定してか、ハンドル位置が前の方にある設定。大柄な男性がシートを後ろにするとハンドルが遠い。ハンドルの前後調整は出来ない。
後席のシートはソリオが厚めで柔らかいのに対し、タンクは座面が平板で薄い。このため、客人をタンクの後席に乗せると、安っぽい印象を持たれかねない。
フロアの高さ、リアスライドドア開口部の広さは、ソリオの方が低く広く、乗り降りしやすい。
この項目、ソリオの勝ち!
積載性
↑スズキ ソリオ 引用:スズキ公式HP
↑トヨタ タンク 引用:トヨタ公式HP
荷物室は、それぞれの個性が出ています。
タンクは後席の凝った畳み方のおかげで床面が低く広くかなりフラット。
畳む手順は少し面倒ですが、頻繁に使う機能ではないので問題はないと思われます。
ソリオは簡単に畳めるかわりに,高さと広さは普通。
よって、荷室の広いタンクの勝ちとします。
乗心地
ソフトなソリオに対し、少し硬めのタンク。
つまり、街中の用途ではソリオが快適、山道などの安定感ではタンクとなります。
そして、タンクの後席は薄いシートの硬さもあって、あまり快適とは言えません。
この項目、理恵さんのジャッジによりソリオの勝ちのようです。
ここで、車内の様子と乗り心地のわかる動画をご紹介します。
静粛性
タンクは明らかに静粛性にまで手が回っていないようです。
エンジンノイズ、路面ノイズ共、よく聞こえます。
これに加え、ゴツゴツした乗り心地なので、クルマ全体が安っぽい印象を与えます。
ソリオの騒音に関しては問題がありません。
この勝負、タンクのオウンゴールによりソリオの勝ち。
燃費
中心車種である次の2モデルを比べます。
メーカー発表燃費 | 実際の燃費 | |
ソリオMZ(マイルドハイブリッド) | 27.8km/L | 20~25km/L |
タンクG-T(ターボ) | 21.8km/L | 15~19km/L |
ソリオのハイブリッドは簡易型とはいえ、燃費には効いています。
両車の低価格グレードではメーカー発表燃費24.5km/L程度とほぼ同じです。
しかし、売れ筋グレードでは明らかにソリオが良好であり、この勝負もソリオに軍配です。
動力性能
ここでも中心車種である次の2モデルを比べます。
最高出力 | 最大トルク | |
ソリオMZ(マイルドハイブリッド) | 91ps/6000rpm | 12.0kg・m/4400rpm |
タンクG-T(ターボ) | 98ps/6000rpm | 14.3kg・m/4000rpm |
数値で見るとタンクが有利に見えます。
ところが、タンクのエンジンは、ターボなしのモデルだと非力、ターボ付きだと、力はあるが低回転で力不足である上に大きなノイズが発生する、という運転しにくいものです。
ソリオのマイルドハイブリッドエンジンは、クルマの性格に見合った、素直な使いやすいエンジンに仕上がっています。
エンジンはクルマの性格を左右するほど重要なものですが、ここでもバランスの取れたソリオが文句なしの勝ち点を獲得しました。
走行性能
両車のプラットフォーム(車台)の設計は、タンクが従来のパッソ(2004~)からの流用なのに対し、ソリオは新設計のもの。
タンクが重いボディをうまく御しきれていないのに対し、ソリオは軽量設計によるバランスのとれた動きをします。
いずれにしても、背の高いクルマですからカーブなどでは不安定になりやすく、それなりの運転を心がけるべきでしょう。
両車の比較では、ここでもソリオがすぐれていると言えます。
高速走行・長距離
性能に余裕があるソリオが中高速はラクです。
疲労感は両車大差ないようです。
この2車は、長距離を走れる最小のクラスと言えるかもしれません。
ここは僅差でソリオが勝ちました。
安全・快適装備
緊急ブレーキは、両車上位グレードに標準装備されています。
サイドエアバッグは、ソリオが最下位グレードを除く全車標準装備なのに対し、タンクはすべてのグレードにオプションとなります。
この点でも後発のはずのタンクは後手に回っており、ソリオに一票が入る結果となります。
デザイン・イメージ
↑スズキ ソリオ 引用:スズキ公式HP
↑トヨタ タンク 引用:トヨタ公式HP
デザインのクオリティは両車大差なく見えます。
サイドビューはタンクが多少煩雑です。
リヤビューは両車共に煩雑です。
いずれにしても、シャレたディテールは皆無です。
外観から受けるイメージもとても似通っています。
軽自動車と同じ価値観を持っていて、「立派に見せよう」という魂胆(失礼)が見え見えで、逆にそれがイタく思えるのは私だけでしょうか。
この判定はイーブンとさせていただきます。
時代が違う、と言えばそれまでだけど、この楽しい雰囲気と、デザインが時を経ても色あせていない点は見習って欲しいな。
価格
ソリオ 1,486,100円~2,272,600円 売れ筋:MZ 1,991,000円
タンク 1,490,500円~2,046,000円 売れ筋:G-T 1,837,000円
リセールバリュー(売るときの査定額)は、
トヨタブランドの強みで、タンクが有利である可能性が高いでしょう。
この勝負、ソリオがハイブリッド主体であることを考えると、役者が一枚上手のような気がしますが、トヨタの値付けのうまさもサスガではあります。
この判定は、読者にまかせる、という意味で引き分けとします。
タンクちゃん、顔色ものすごく悪いよ。
判定
判定は、ソリオ対タンク、9対1、3引き分けでソリオの圧勝となりました。
予想通りとはいえ、後出しジャンケンのタンクがこれほどコテンパンにやっつけられるとは驚きです。
どうしてこんなことになったのか、このあと少し考えてみたいと思います。
番外編 クルマを所有するということ
↑スズキ ソリオ 引用:スズキ公式HP
↑トヨタ タンク 引用:トヨタ公式HP
近年の日本車は、出来合いのパーツの単なる寄せ集めである、と一部に危惧する声があります。以前、メーカーのエンジニアの話としてカーグラフィック誌に紹介されていたので信ぴょう性があります。
例えばAというクルマを造るにあたって、コンセプトやデザインを決めるかたわら、主要部分は、メーカー手持ちのパーツ(エンジン、ブレーキ、足回り、ミッション、プラットフォームなど)の中から良さそうなものを持って来て組み合わせます。
その結果、それぞれのパーツが絶妙のマッチングを見せる……というわけにはゆきません。まとまりの良さに少し欠けます。出来上がるクルマは没個性の、どこにでもあるようなものになります。
もちろん、現代のマスプロダクションは、それが正義かもしれません。
各パーツは使用実績のある信頼性にすぐれたものなので、壊れない日本車としての名声をますます高めることにはなります。
これに対し、スズキのソリオは、メーカーの心意気をビシビシ感じられるクルマになっています。それもそのはず、プラットフォーム(車の台車部分)は、ソリオのために新設計されたものですし、エンジンのラインナップにも、クルマに合った工夫がなされています。軽量化の試みも、普通ならそこまでやらなくてもいいほどの徹底したものです。
こうした努力とクルマに対する情熱が、微妙な差となって先ほどの判定に結び付いたものと思われます。
どうせクルマを所有するなら、心意気のあるクルマを!
クルマに対する愛着の度合いも変わって来るものと思われます。
まとめ
クルマを買う、ということは、情報過多のご時世ゆえの難しさがあるように思います。
様々な情報が得られるがゆえに、迷ってしまう……。知らなくてもいい欠点も明らかになってしまう……。
ここでは、できるだけ簡潔に、整理した情報をお届けするよう気を配ったつもりですが、いかがだったでしょう。
「物語」を振り返ってみると、次のようになります。
- スズキソリオの売れ行きに注目したトヨタ連合は、ダイハツに対抗車を造らせることにした。
- 2年という短期間でタンクを造りあげることはできたが、実は旧式のプラットフォームを使った2番煎じのクルマだった。
- ところが、さすがトヨタの強大な販売網、コンパクトクラスの大人気車に押し上げることに成功した。
物語はまだこれからも続きます。
2019年秋、スズキはトヨタと資本提携を結びました。
次回のフルモデルチェンジで、両車の関係はどのようなものになっているのでしょうか。
さらに、他のメーカーまで進出して、「箱合戦」が熾烈になるかもしれません。
新しいトヨタ連合の健闘に期待するとともに、トヨタという資金源を得たスズキには、さらなる高みを目指して頑張っていただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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