スタジオジブリは、かつては日本のアニメ映画をけん引し、新作を出すたびに社会現象を引き起こしていた存在でした。
しかし、現在では「時代遅れ」等と言われることもあり、見たことが無い・興味が無いという若い世代も増えてきてしまいました。
なぜ最近の若者には見られなくなってしまったのでしょうか。
その背景に、インターネット動画配信皆無という事情が暗い影を落としています。
ジブリ作品は時代遅れ?
ジブリ作品が時代遅れと言われる原因の一つに、そもそも若い世代が見る機会が激減したという事情があります。
ジブリ世代が生まれた背景
週末前の金曜夜だけ夜更かしを許される家庭は多く、そんなときに金曜ロードショーで流されていたアニメ映画はジブリ作品とドラえもんくらいのものだったのです。
また、給食時等、学校のテレビで流すことが許されたアニメも、ジブリ作品とドラえもんが主流。
ジブリ作品は、みんなで共有されてきた数少ない娯楽作品の象徴だったのです。
しかし、時代は変わりました。
現代の若者は子どもの頃からネットに触れ、動画サイトやアプリで数多ある娯楽を選び放題であることになれた世代。
それなのに、ジブリ作品を見る手段は未だに平成初期から変わらず、DVDを購入orレンタルするか金曜ロードショーでの放映を待つしかありません。
そんなものを待たずとも魅力的な娯楽に溢れている現代人が、わざわざジブリ作品に手を出す理由が希薄です。
金曜ロードショー事態が時代遅れか
わざわざ録画しても、録画したテレビ番組を見るより動画サイトの動画を見る方が手軽でバリエーション豊か。
そもそもテレビ離れ事態がかなり加速している現在、金曜ロードショーに手が伸びる子どもはほとんどいないのではないでしょうか。
それに加え、手軽な動画を次々と乗り換えることに慣れた若者たちの中には、映画一本見切るだけの集中力が持たない人も多いと聞きます。
また、過酷な労働環境が蔓延しているため、現代の社会人はとにかく時間がありません。
そのため、長い映画は動画サイトで倍速視聴する人も多いのです。
色んな意味で、金曜ロードショー頼みの現状を打破しなければ、新しいファンを獲得し続けることは至難の業でしょう。
ジブリ作品が動画配信されない理由とは?
現在、日本でジブリ映画の配信権を持っているのは日本テレビだけです。
何故なら、日本テレビは『魔女の宅急便』以降のジブリ作品の共同制作を担ってきたため、ジブリ作品の放送権も所持しているのです。
毎年金曜ロードショーでジブリ作品が放映されるのも、日本テレビだからこそ。
逆に言えば、日本テレビ始めジブリ作品の製作委員会に名を連ねる全員が良しとしなければ、動画配信サイトでの配信は見込めません。
海外での放映権は別問題
なんで日本はダメなの!? と驚いた人、
海外が行けるなら日本もその内配給されるのでは! と期待した人、様々いたと思います。
しかし、ジブリ作品の海外での放映権はちょっとややこしいことになっているようです。
- 1990年代中頃 「となりのトトロ」がアメリカで劇場公開。フォックスビデオから発売されたビデオソフトが60万本売り上げる(トトロ以前はアジア以外の海外での放映は積極的に行ってこなかったらしいです)
- 1996年 ウォルト・ディズニーグループと、海外でのジブリ作品配給と国内でのビデオソフト発売に関わる事業提携を締結
- 2002年頃 千と千尋の神隠しの頃から、北米とアジアを除いた海外での配給にフランスのワイルドバンチが関わるように
- 2017年 2011年頃から北米における配給に関わるようになっていたGKIDSが正式に北米での配給権をディズニーから引き継ぐ
- 2019年10月 2020年5月からGKIDS経由で、ワーナーグループのHBO Maxでジブリ作品の配信が発表
- 2019年10月 カナダのBell Mediaがワーナーグループと提携。HBO Maxのカナダでの提供を発表
- 2020年1月 ワイルドバンチからネットフリックスが配信権を取得したことが発表 → 日米以外のネットフリックスでジブリ配信
日本でのネット動画配信条件
しかし、ジブリ作品の製作委員会には日本テレビやディズニーなどネットフリックスとは競合他社関係にあるメディアが入っているため、国内での配信は一筋縄にはいかないようです。
制作者であるジブリが舵を取ればいいんじゃないの? と思う人もいるかもしれませんが、著作権法上、権利行使には原則として製作委員会全員の合意が必要となっているのです。
(共有著作権の行使)
第六十五条 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については,各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,その持分を譲渡し,又は質権の目的とすることができない。
2 共有著作権は,その共有者全員の合意によらなければ,行使することができない。
3 前二項の場合において,各共有者は,正当な理由がない限り,第一項の同意を拒み,又は前項の合意の成立を妨げることができない。
特に日本テレビにとって、現代人のテレビ離れが進む中、金曜ロードショーでのジブリ作品の視聴率の高さは貴重なもの。
動画配信をすれば今までのような視聴率を保持できないだろうことを予想すれば、首を縦に振るとは思えません。
ただ、このまま若者の認知度が減り、ジブリ人気の低迷が加速してしまえば、そのジブリ作品の高視聴率もやがては下がっていくことになります。
まとめ
このまま若い世代を取り込めない状況が続けば、ジブリの人気も風前の灯火。
そして映画が若い世代を取り込むためには、何らかの形で動画配信に踏み切ることは必要条件でしょう。
作品のクオリティもブランド力も申し分ないのですから、どうか重い腰を上げて国内での動画配信を視野に入れてほしいと切望します。