テレビの影響力が低下している―――何年か前からそう噂されています。
特に「若者のテレビ離れ」等と揶揄され、若年層の視聴率が伸び悩んでいると言われています。
ほんの十数年前までは各メディアの中で圧倒的な影響力をもっていたテレビ。
それなのに、なぜ今テレビの影響力が急速に低下していると言われるのでしょうか。
その理由や原因を調べてみました。
テレビの影響力が低下している理由は?
まず、本当にテレビの影響力が低下しているかどうかを確認してみましょう。
テレビの影響力低下が切実に語られるようになったきっかけは、2021年5月25日に公開された『国民生活時間調査2020』です。
このNHKが行う『国民生活時間調査』は5年ごとに調査、比較、公開されており、情報収集方法が明確、無作為でありデータとして十分な数を揃えていることなどから信頼度の高い調査とされています。
それも、他の誰でもないNHKが行うものですから、いたずらに放送局側に不利な数字を誇張しテレビの不人気を煽ることは考えにくいわけです。
そんな『国民生活時間調査』で、無視できない数字が明らかになってしまったのです。
上記はテレビの行為者率のグラフです。
各年代で毎日テレビを視聴する人の割合ですね。
60代70代はほとんど変わらないのに、50代より若い世代は平均して17ポイントも、一番格差の激しい16~19歳は実に24ポイントも下がってしまっているのです。
国民全体で見れば79%と、「まだ8割も見ているじゃないか」と受け取る人もいるかもしれませんが、グラフを見れば60代以上の数字が群を抜いているだけなのは明らか。
それも今後は加速していくと見られています。
また、『国民生活時間調査2020』では、インターネットの行為者率とテレビの行為者率も年代ごとに比較しています。
わかりやすく30代を起点に交差しています。
このように、そもそも毎日テレビを見ている人が激減しているのです。
これは『テレビの影響力の低下』そして『若者のテレビ離れ』が事実である、ということができるでしょう。
なぜテレビを見なくなったのか
次に、若者を中心になぜテレビを見なくなってきたのかを整理します。
スマホの普及
やはり、一番にあげられるのはこれでしょう。
ケータイ・スマートフォン所有者のうちのスマートフォン比率は、2015年に51.1%と過半数を獲得して以降うなぎ上りで、2019年に85%、2021年には92.8%と、もはやケータイを使っている人を探す方が難しいほどになりました。(『2022年一般向けモバイル動向調査』参考)
ちょうど上記した『国民生活時間調査2020』が比較する5年前にスマートフォン普及率が過半数を超えたことになります。
この急速なスマホ普及により、国民の時間は常に手元にあるスマホに吸収されることになりました。
スマホの汎用性の高さ
街中を見ても、もはや国民総スマホ依存と言われても仕方がないほどスマホをいじる人の比率はものすごいものがあります。
それもやはり、スマホの汎用性の高さが一番の理由ではないでしょうか。
スマホ一台あれば、できることが無限大です。
SNSに動画、ゲームに読書、調べものに手帳、もちろん通話やメール、ビデオ通話までできてしまいます。
今までは特に理由も無くテレビを垂れ流していた人たちも、今はもっと幅広いスマホで時間を潰すことができるようになってしまったのです。
スマホ一台で本当に無限大で、『スマホに飽きる』ということはあり得ないでしょう。
スマホの手軽さ
それに何より、スマホは常に手元においておけるほどコンパクトであり、手軽です。
テレビは基本家にしかなく、居間かせいぜ自室にある程度。
画面が見える位置に拘束され、外はおろか他の部屋に持ち運ぶこともできません。
しかしスマホは、ネット環境さえあればどこでも楽しめます。
アプリによってはネット環境すら必要ありません。
それも、他の家人への遠慮もいらないため、チャンネル争いとも無縁で、個々人の好きな時に好きなことができるのです。
個人主義
中年層以上は大衆に迎合することが常識でしたが、現代の若年層は個人主義。
個々の個性を尊重することを美徳とし、どんなマニアックな物であっても、調べものから仲間探しまでスマホがあれば可能なのです。
大衆向けに作られたテレビに合わせなくても、自分が本当に好きな物を、同志たちと楽しめるのですから、視聴率主義で大衆向けに作られたテレビへの興味が薄くなってしまうのも仕方がないのかもしれません。
若者は時間が無い
また、根本的に現代の若者は時間がありません。
学生は塾や習い事、高学年になればバイトも加わります。
社会人になれば国が副業を薦めるほどの薄給で、資金繰りに家事育児と休まる暇がほとんどありません。
それもテレビは、録画しなければ番組表通りにしか視聴できません。
時間も金銭面も余裕のあった高度経済成長期とはわけが違います。
こんな時代に、テレビに合わせて何十分も過ごす時間を捻出できる人がどれだけいるのでしょう。
現代の若者はタイパ(タイムパフォーマンス=時間効率)を重視すると言われ、倍速視聴愛用者も多くいるほどです。
ようやく捻出したわずかな暇にタイミングよく自分好みのものを得ようとすると、テレビはあまりにも不便なのです。
スポンサーもネット広告へ
また、スポンサーも今はテレビCMだけでなくネット広告へ流れてきています。
一方的に流すだけのテレビCMとは違い、ネット広告は利用者の反応(クリック頻度、購入履歴など)が詳細に把握できるため、スポンサー側も広告効果を実感しやすいのです。
Android TVの普及
さらに、Android TVの普及があります。
AndroidTVがあれば、TVで様々な動画配信サービス、果ては一部ゲームアプリまで簡単に接続できてしまうのです。
好きなテレビ番組があったとしても、ほとんどが民放ならTVerで、NHKならNHK+で一週間見逃し配信できます。
リアルタイムのテレビ番組に固執する必要性というものがどんどん無くなってきているのが実態です。
テレビの地上波でリアルタイムで視聴するよりもネットで視聴した方がメリットが大きかったりします。
まとめ
テレビの影響力低下は、もはやごまかしの効かないところまで来ています。
テレビの衰退に歯止めをかけられるかどうかは、令和一けたの内に答えが出ることでしょう。
今の手軽さ的を考えると、もうインターネットに切り替わっていくのは間違いないと思います。