『虎に翼』は、2024年4月から始まったNHKの連続テレビ小説です。
女性初の弁護士、果ては裁判官となった三淵嘉子さんをモデルとした今作。
「法律」というと難しそうですが、そのイメージを覆すほどユーモラスで、身近で、ドラマティックで、各テーマの扱い方が真摯で、誰一人として無駄な配役が無い作品でした。
放送初週で早くもSNSで話題沸騰となった問題作『虎に翼』。最終週はどうなったのでしょうか。
ここでは、『虎に翼』最終週のネタバレあらすじをまとめます。
最終週『虎に翼』第126話 あらすじ
最終週は、美佐江の遺した手帳の内容で幕を開けました。
美佐江は、寅子が新潟へ転勤になっていた時に出会った、当時高校生の少女です。
地元一の権力を持つ名家の娘であり、学に秀でた優等生でありながら、陰では友人たちをそそのかして売春や盗難行為などをさせていました。
彼女が目をつけた人には、彼女手作りの赤いビーズのブレスレットが与えられます。
寅子も一度はそれを与えられますが、彼女の意にそわない言動をしたことで彼女自身の手で引きちぎられました。
それでも根気よく対話をしようと説得する寅子でしたが、あと一歩のところで偶然寅子の娘優未が来てしまい、美佐江に恐怖心を抱いていた寅子は思わず優未を守るような行動をとってしまいます。
それが美佐江の心を断ち切ることとなり、二人の仲はそれっきりとなっていました。
美佐江の手帳によると、「自分は特別な存在だと思っていたのに、東京に出たらただの女に過ぎず、手のひらで転がすつもりが転がされていた。子を身ごもることで変化を望んだが無駄だった。かろうじて残る「特別な私」が残る内に消えるしかない。あの人(おそらく寅子)を拒まなければ、何か変わったの?」という内容がつづられていました。
その手帳を寅子に見せたのは、美佐江の母である佐江子でした。
幼い内に母を亡くした美佐江の娘美雪は、母の手帳を持ち歩きながら、母をなぞるように似たような行動をとっていたのです。
夜。家に帰った寅子は、夫航一にその話をします。
航一は寅子を元気づけようと、いつだったか寅子が航一を元気づけてくれた「ちちんぷいぷい~」を真似しますが、途中で挫折します。
そこに現れてしまったのは、航一の息子朋一。仕事を辞め、離婚した朋一は、法律から離れたいと家具職人になることにしたのです。
最高裁大法廷では、美位子の裁判が行われることになりました。
尊属殺の重罰規定が合憲か違憲かが問われる裁判です。
よねは毅然とした態度で「原判決は破棄されるべきです」と主張します。
その頃、美雪が家裁へ送検されてきました。
盗難教唆事件と売春防止法違反事件で補導されたのです。
最終週『虎に翼』第127話 あらすじ
「調査なんていりません。ぜ~んぶ、私がやりました」と自白する美雪。
そして、寅子に「どうして人を殺しちゃいけないのか」と問います。
それはかつて、美雪の母美佐江も寅子にした質問でした。
寅子は答えます。
「奪われた命は元に戻せない。死んだ相手とは、言葉を交わすことも、触れ合うことも、何かを共有することも永久にできない。だから人は、生きることに尊さを感じて、人を殺してはいけないと本能で理解している」「理由がわからないからやっていい、じゃなくて、わからないからこそ、やらない」
そんな答えで母は納得するか、と問う美雪に、お母さんの話はしていない、あなたはどう思った?と重ねて問う寅子。
美雪は、ナイフを向けます。
自分と母親のことを「異質で特別で、手に負えない、救うに値しない存在だ」と表現する彼女に、寅子は「全く逆!」と否定。
特別なのは他の子も同じ。美佐江を恐ろしい存在と勝手に思ってしまったことが過ちだった。美佐江を永遠に失ってしまったから、本当のことはもうわからない。黙って寄り添うべきだった、という寅子。
「あなたはお母さんを真似しなくていい。手帳の意味や、お母さんを庇う理由を見出そうとして傷を負わなくていい。親に囚われ縛られ続ける必要は無い。どんなあなたでいたいか考えて教えてほしい」と説きます。
美雪はそれを拒絶して、ナイフを投げ捨て出ていきました。
寅子は美雪を、試験観察として民間の施設で生活させます。
そして、半年後の審判の日。
美雪は「私がいると、おばあちゃんの心が休まらない、お母さんを思い出し続けるのもかわいそうだから、施設にいたい」と言います。
しかし、祖母佐江子は「早く一緒に暮らしたい」「毎日頑張ってくれている姿が伝わったから、面会が楽しみになった」と、美雪を受け入れることを宣言します。
それを聞き、美雪はようやく自分の本音を口にしました。「おばあちゃんと、一緒にいたいです」と。
寅子が「きちんと人生を歩んで行ける」と判断し、美雪は不処分となりました。
そして、昭和48年4月。最高裁大法廷の判決日が訪れます。
最終週『虎に翼』第128話 あらすじ
美位子の尊厳殺最高裁判決の日。
よねたち出立直前に、寅子が応援に駆け付けます。
寅子の応援を受け、よねたちが出立した後、美位子は寅子に、もし勝てたらどうなるのかを聞きます。
原判決が破棄されれば、恐らく執行猶予がついて社会復帰が叶う、と応えると、
殺した時の感覚が忘れられない、服役した方が気が楽なんじゃないかと言って泣く美位子。
それに、「あなたの尊厳を全て奪って、何度もあなたの心を殺してきた相手を肯定しかねない」「あなたができることは、生きてできる限りの幸せを感じ続けること」と寅子は説きます。
最高裁法廷では、桂場が判決文を読み上げていました。
「原判決を破棄する」「尊属殺に関する刑法200条は、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比べ、著しく差別的であり、憲法14条1項に違反して無効である。この見解に反する従来の判例はこれを変更する」
昭和25年、同じく尊属殺が合憲か違憲かを問われた時、合憲判決が下っていました。
そのとき、賛成13人に反対した2人の中に、女子部の恩師穂高先生がいたのです。
それが今回は、賛成1人に対し反対14人と、まさに汚名返上となったのでした。
よねは美位子に「もう誰にも奪われるな。お前が全部決めるんだ」と激励します。
一方。少年法対象年齢の引き下げを問う法制審議会では、寅子が語ります。
「家裁には、家庭からも、社会からも、学校からもはじき出された子たちがたくさんやってくる。独りぼっちの子たちの味方は我々しかいない。わからなくてもまずは寄り添うんです」
「学生運動も下火になり、首相も法務大臣も変わった今、形骸化した議論を重ねても疲れるだけ。それでもこうして集まるのは、非行を犯してしまった子どもたちに、あらゆる方法で健全な育成を図りたい。その思いが皆にあるからでは?不毛なことは一旦やめて、今日は愛について語り合いませんか?」
その後も協議はしばらく続きましたが、少年法対象年齢の引き下げは見送られました。
のどかは夫の誠也のニューヨークでの個展が決まったことを報告。
美位子は、新潟に引っ越し、涼子の店で働くことに。
「人生に失敗したことが無い人たちはかっこいい」という美位子に、優未は大学院中退してふらふらしている自分を「私は世間から見たら失敗してる」と応えます。
それを聞き、寅子は「(ふたりとも)人生を失敗していない。自分を責めて辛くなるくらいなら、周りのせいにして楽になって。ここまで頑張ってきたあなたたちには、その権利があるってこと!だから失敗なんかじゃ絶対にない!」と熱く語ります。
二人が去った後、寅子は写真の優三に話しかけます。
「(母親としては失敗ばかりで)根本的に向いてない」と。
そこに、優未が来ます。
最終週『虎に翼』第129話 あらすじ
優未は「私の選択を応援するって言っておいて、やっぱり、娘がまっとうじゃない、子育てを失敗したって後悔してるってこと?」と聞きます。
「寄生虫の研究も、家のことも、料理も、読書も、マージャンも、着付けも、お茶や刺繍も、笹竹で働く時間も、皆といる時間も、一人でいる時間も、お母さんといる時間も好き。好きなこととやりたいことがたくさんある自分は、この先何にだってなれる。それは最高の人生だ。最高に育ててもらったって思ってる。だから、心配ご無用です」と宣言する優未を、寅子は泣きながら抱きしめました。
改めて優未が出て行ったあと、優三が寅子に「トラちゃん。約束守ってくれて、ありがとうね。」と微笑みかけました。
横浜家庭裁判所所長就任が決定した寅子が、花江のところに報告に行くと、花江は「後悔のない人生だ」と語り、「こんな人生をくれてありがとう」と寅子に告げます。
そして、ちょうどアメリカに行っていた直治が帰ってくる日だと言います。
その日の夜は、久しぶりに猪爪家揃っての夕食会となりました。
横浜家庭裁判所所長就任の日。女子部の面々が笹竹に揃っていました。
そこに桂場が登場。
寅子が「法とは何か」問答を始めます。
寅子は今、法を「船のようなもの」だと思っていると言います。
「人が人らしくあるための尊厳や権利を運ぶ船。社会という激流にのみ込まれないための船。船の使い方は、乗りて次第。人らしさを失い沈むことも、誰かを鎮めることも、間違うこともある。人生という船旅を快適に幸せに終えるために、乗り手のわたしたちは、船を改造したり修繕したりしながら進む」
「生い立ちや、信念や、格好、男か女か、それ以外か、全ての人が快適でいられる船にするよう、法を司る者として、不断の努力を続けていきます」
そこで桂場は、「わたしは今でも、ご婦人が法律を学ぶことも職にすることも反対だ」と言い出します。
最終週『虎に翼』第130話 あらすじ
平成11年。
男女共同参画社会基本法施行のニュースから始まります。
朝食をとる優未の横で寅子が熱心に話しかけていますが、寅子はその15年前に他界。
優未は、自宅で着付けや茶道の教室、雀荘と寄生虫研究の雑誌の編集、花江とそのひ孫の面倒を見る生活を送っていました。
まだ女学生だった寅子が花江と登校していた橋の上で、携帯電話で電話をしているOLを見かけます。
彼女は理由も告げられず即日解雇されたことを誰かに話しており、「多分、私が駄目で、悪いんだと思う」と話していました。
それを聞いた優未は、労働基準法第20条にある、雇用主の解雇予告義務は30日前に決められていることを伝えます。
優未は、「みんなが持っている権利なので、使わないと」「佐田優未の知り合いと言ってくだされば」と知り合いの弁護士を紹介します。
そのOLは、美雪でした。
美雪は、佐田という苗字に反応しますが、「法律は、あなたの味方です」と笑顔で去る優未に何も告げないまま別れました。
由美が帰ると、航一が待っていました。
老人ホームではなく、ここで暮らそうと説得する由美に、航一は「子どもたちに縛られず自由に過ごしたい」と断ります。
そんな航一に、優未は秘密の話を聞いてほしいと切り出します。
優未は、寅子のすごいところかっこいいところを何も引き継げないまま人生が終わってしまうと思っていたが、さっき、自分の中に寅子を感じたと語ります。
「私にとって、法律ってお母さんなんだよなあって」「み~んなの中にあって、寄り添ってくれるものなんだよなあって」と語り、去っていきました。
航一は「寅子さんがいなくなってとても寂しいけれど、もう少しこうやって彼らを見守ってこの余生を楽しみたいって、自分でも驚いてしまいますが、そう思っているんですよ」と語ります。
しかし、寅子(の幽霊?)は、優未の言葉に浮かれるばかり。
「はて?今の僕の話、聞いてました?」「あ…なるほど。あっ、ごめんなさい。さっきのが嬉しくて余韻に浸ってしまって、つい」そんな相変わらずの会話をし、航一は「その得意気で幸せそうな顔、懐かしいな」と目を細めました。
航一が思い出していたのは、横浜家庭裁判所所長就任の日の、寅子と桂場の問答です。
桂場は「法を知れば知るほど、ご婦人たちは、この社会が不平等で、歪でおかしいことに傷つき苦しむ。そんな社会に異を唱えて何か動いたとしても、社会は動かないし、変わらん」と続けたのです。
寅子は「でも、今変わらなくても、その声がいつか何かを変えるかもしれない」と返します。
「君はあれだけ石を穿つことのできない雨垂れは嫌だと腹を立ててきただろ」と、睨む桂場。
「未来の人たちのために、自ら雨垂れを選ぶことは、苦ではありません。むしろ至極光栄です」と、胸を張る寅子。
それに対し、桂場は「それは、君が佐田寅子だからだ。君のように血が流れていようとも、その地獄に喜ぶ物好きは、ほんの僅かだ」と断定しますが、それに異を唱えたのはよねたち女子部のメンバーでした。
「いや、ほんの僅かだろうが、確かにここにいる」と応えるよね。同意するように強い視線を送る女子部たち。(さらにその向こうの女性客たちも、一人、また一人と立ち上がって視線を向けていました)
桂場「失敬。撤回する。君のようなご婦人が特別だった時代はもう終わったんだな」と言う桂場に、寅子は笑います。
「はて?いつだって私のような女はごまんといますよ。ただ時代が、それを許さず特別にしただけです」
席に戻った寅子の後ろに、亡き母はるが、あの日の場所に立ちます。
「寅子。どう?地獄の道は」と問いかける母に、寅子は満面の笑みで「さいこう!です!」と両腕で大きく丸を作り、泣き顔に代わります。それにはるは「そう」と笑顔を返しました。
まとめ
半年かけて寅子の人生を描いた『虎に翼』。
重いテーマ、重い話、答えの無い問題を多く扱いながらも、その脚本は軽快で、あたたかい愛と笑いにあふれていました。
本当は、最終回に寄せられた評判をまとめようと思っていたのですが、それぞれの語る『虎に翼』の思い出のバリエーションが豊富すぎて、まとめることを諦めたほどです。
それだけ、誰がどんな角度から見ても語れるほど、肉厚で多面的な作品だったと言えます。
あなたにとっての『虎に翼』は、どんな物語だったでしょうか。