今や知らない人はいないほどに大きくなったコンテンツ『ポケットモンスター』。
その初代ゲーム『ポケットモンスター 赤・緑』の販促アニメとして始まったアニメ『ポケットモンスター(以下ポケモン)』は、1997年に放映開始してから2022年5月現在まで、一度も主人公も相棒ポケモンも代わっていないことでも有名です。
しかし、2019年に新シリーズが始まってから、ネット上では「とうとう主人公が交代するのでは」という噂が出始め、2022年4月に最終章突入してからその噂が真実味を帯びてきました。
ポケモンのアニメが終わるという噂
2019年11月から放映された今シリーズは、今までのアニメ『ポケモン』(以下アニポケ)とは一線を画すところが多々ありました。
シリーズタイトルが無い
今までのアニメシリーズは、最初期の『ポケットモンスター』以降、『アドバンスジェネレーション』『ダイヤモンド&パール』『ベストウィッシュ』『XY』など、ベースとなるゲームと同じシリーズタイトルを冠していました。
それが、今シリーズで突然シリーズタイトルを取っ払い、まっさらなタイトル『ポケットモンスター』だけで始動したのです。
そのため、最初期のアニメシリーズ(通称『無印』)と区別するため、『新無印』等という通称で呼ばれています。
また、メインタイトルロゴの色も、今までの緑色から青色へと一新。
同時期に発売されたゲーム『ソード&シールド』のくくりにこだわらず、過去に出てきたあらゆる地方へ行き来し、あらゆるポケモンやキャラクターと交流する形になっています。
初めてのサトシ以外の主人公
それも、原作ゲームとも全く関係ない完全アニメオリジナルキャラ『ゴウ』というキャラクターが、22年もアニメ版を支え続けた主人公サトシと肩を並べ『W主人公』として登場したのです。
ちなみにヒロインも、これまたアニメオリジナルであり、ゴウの幼馴染という設定の少女コハル。
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— Koharu's diary❤ (@ItsBlueBerryXD) May 23, 2022
お前ら誰だよ!?
というのが、過去作から視聴してきたファンの本音だったでしょう。
しかも、最初期から言い続けた決め台詞「○○(ポケモン名)、君に決めた!」が封印され、主人公二人ともが「○○、GO!」と言うようになり、否応なくW主人公感をゴリゴリに押してきて、困惑したファンも多かったのではないでしょうか。
しかし、見ていくうちに「なるほど」と思ったのが、ゴウの性格設定です。
サトシは明朗快活、行き当たりばったりで考えることが苦手で、でも好きなことへの情熱と根性がとにかくたくましい。
ポケモンと見れば即「バトルしようぜ!」と後先考えずバトルしちゃう、子どもらしくて平成キッズが親近感を抱きやすいキャラクターでした。
しかしゴウは、賢いがゆえに周りと歩調を合わせるのが苦手。不登校で(勉強ができるので行く必要性が無い)、大人顔負けのポケモン知識を持て余していたプライドの高い少年です。
それがサトシという『ポケモン』でつながれる友だちを得て、必要な時はバトルをするけれど、バトルで勝つより『すべてのポケモンをゲットしたい』『いつかミュウにたどり着きたい』というコレクター魂が強く、バトルが不向きなポケモンの気持ちにも優しく寄り添い、尊重できる繊細さがある。
平成キッズからするとまどろっこしいようですが、多様性を重んじる令和キッズにはむしろサトシ以上に親近感を持ってもらえる性格設定になっていると感じます。
あと、ゴウもコハルも根が素直で優しいので、サトシのことも過去キャラたちのことも、隙あらば褒めたり共感してくれるので、古参ファンへの配慮も感じられます。
ちなみに名前は、2016年に始動し話題になったアプリ『Pokémon GO』を意識しており、コレクター魂の強さもアプリの特性、アプリファンの特性を反映したのではないかと噂されています。
アニメ最初期よりさらに前からスタート
この『新無印』の第一話は、まさかのW主人公不在回でした。
なんと、初代『無印』よりもさらに前、ピカチュウがさらに進化前のピチュ―だったときの話から始まったのです。
サトシと出会う前のピカチュウの生い立ち、その最後にサトシとの出会いが少し触れられ、
『アニメポケモンの新しい始まり』を印象付けました。
サトシは過去シリーズの経験を経たサトシ
ではサトシは全く新しく生まれ変わった今までとは別世界線のサトシなのか、というと…
実はその逆で、今までの全シリーズを経たサトシであることがわかってきます。
まずサトシの部屋に、前作『サン&ムーン』で得たトロフィーなどが飾られており、ゼットリングも使用していることから、少なくとも『サン&ムーン』と地続きであることは第一話から明白でした。
それどころか『新無印』は折に触れ、過去キャラと絡む絡む!
今までのアニメシリーズではむしろ、『過去シリーズとは別物ですよ』とでも言うかのように、改めて一からのスタートという体で仕切り直し。
過去キャラを出すときだけは「昔旅した仲間」等と言わせていましたが、どのシリーズとどのシリーズが継続しているのか、はたまたどれもバラバラの世界線なのかはあやふやにされてきたことが多かったようです。
しかし今回は、オープニングムービーですでに過去キャラを多用し、過去キャラ回が多く、思い出話も多く、お互いに「あの時にあんなことがあった」「これから自分はこういう目標の元がんばっていく」と過去・現在・未来をつなぐセリフ回しも多い。
これはもう言い逃れできません。『全シリーズおさらいサトシ』です!
最初期のライバル再登場!
特に、最初期のライバル(原作ゲーム緑の主人公ベースのキャラ)・シゲルが約12年ぶりに深く絡んできます。
何故なら今回、シゲルはサトシのライバルではなく、W主人公の相方・ゴウのライバルに位置するからです。
最初は驚きましたが、皮肉屋のシゲルに対し、その皮肉を全く意に介さず笑って受け流しちゃうサトシより、プライドが高く皮肉にイラつきつつも相手の能力の高さを認められるゴウの方が、シゲルとライバル関係としてバランスがいいように思えます。
まさかのあのヒロインまで再登場!
しかも、『XY』のヒロイン・セレナまで登場しました!
なぜセレナだけ強調するかというと、この22年という長いアニメポケモンの歴史の中で唯一『別れ際にサトシにキスをしたヒロイン』だからです!
『XY』は過去シリーズの中でもシリアス度が高く、『一番ポケモンマスターに近づいた』とまで言われており、『XYのサトシは別格にかっこいい』とファンの間でも話題に上がる一味違った世界線。
それゆえ、セレナが恋愛感情を抱くのは無理も無く、別れ際にキスをしたのも甘酸っぱい思い出―――とおさめたいのですが、
当時はこれが物議を醸し、一部で炎上。
人気キャラであるにも関わらず、その後のシリーズでゲスト出演することはこの5年間に一度もなかったのです。
今後アニポケではセレナは腫れもの扱いなのか…
と思われていたところで、まさかの再登場!
ただ、扱いは難しかったらしく、コハルと出会い交流するものの、サトシとはすれ違い―――
最後の最後残り2分のところで、サトシが帰路に着くそのときにようやく再会!
互いの今目指すものを確認し、激励して別れたのでした。
ほんの2分の再会とはいえ、ネット上でファンが沸いたのは言うまでもありません。
主題歌に主人公起用!
『新無印』の主題歌はまふまふ作詞作曲『1・2・3』。
このシリーズのために書き下ろされ、歌詞の中に最初期の主題歌の歌詞「たとえ火の中 水の中」が入っていたことで喜んだ初代ファンも多いでしょう。
この曲を、『After the Rain(そらるとまふまふのユニット)』『西川くんとキリショー』、『からあげ姉妹』と歌い継ぎ、
最終章突入と同時に、新たな二人の歌い手に代わりました。
今まではほとんどの主題歌でサトシが起用されていたのですが、新無印になってからサトシ声が消えていました。
なので、私は『新無印』となり主人公交代説が浮上した時「本当に交代なら、またサトシに主題歌歌ってほしいなー」なんて個人的に思っていたので、満を持しての主人公起用に「まさか、本当に交代か!?」とドキリとしました。
主人公のサトシ交代で新しいアニメになる?
ここまで読めば、『新無印』になって『主人公交代説』が流れ始めた理由がいくつもあることがわかっていただけたと思いますが、
私は、実は『新無印』の前シリーズ『サン&ムーン』からすでに、主人公交代の布石が打たれていたのではないかと読んでいます。
突然の『子ども向け』への路線変更
アニメポケモンがシリーズを重ねるにつれシリアス度が増していき、
それにつれ、アニメポケモンを見る層も年齢層が上がっていきました。
『XY』の頃にはそれが最高潮で、
その反面、本来のポケモンが狙う年齢層『小学生くらい』の子たちが置いてけぼりになっていったと聞きます。
そのため、『XY』の次シリーズ『サン&ムーン』でアニポケは心機一転を図りました。
ダジャレを多用したギャグ路線になったのです。
キャラデザも、シャープでかっこいいシリアス調を粉々に砕くコミカルなデザインになりました。
演出も、鼻水をたらしたりぶっ飛んだり派手なリアクションをしたり―――
一目見ればわかります。明らかに『子ども向け』になりました。
サトシも旅を続けるスタイルから一転、熱帯地方をイメージしたアローラ地方の学校に通い始め、ジャンルがまさかの『冒険モノ』から『学園モノ』に。
『XY』とのあまりのギャップに、情報公開当初は荒れに荒れ、これを期にアニポケから離れた古参ファンもたくさんいました。
しかし、制作側の狙い通り、ターゲットである『子どもたち』は再びアニポケに飛びついたのです。
アニポケは元々、原作ゲームの販促アニメ。
ゲームよりも敷居の低いアニメで多くの子どもたちに親しんでもらうことが目的だったはず。
子ども向けでありながらも大人も引き込むようなシリアスな面も内包しているからこそ、20年以上にわたる息の長い人気が出たとはいえ、常にその時代の子どもたちに喜んでもらえなければやがて衰退してしまうことは明白。
『XY』のようなシリアス路線しか許さないファンを一度アニポケから遠ざけてでも、初心に帰る必要があり、
そのためには思い切った路線変更が必要だったのでしょう。
そういう意味で、『サン&ムーン』は見事にその役目を果たしたと言えます。
また、『サン&ムーン』でサトシは初めて『リーグ優勝』を果たしました。
この時点ですでに「いよいよ卒業か」と一度噂が出ましたが、「リーグ優勝だけではポケモンマスターとは言えない」という指摘もあり、実際に『ポケモンマスター』という肩書には触れないまま『サン&ムーン』は終わりました。
過去シリーズと『サン&ムーン』を足して二で割った再スタート
『サン&ムーン』で一度古参ファンを振り切り『子ども向け』に立ち戻り、ようやく再スタートを切る準備ができました。
『新無印』は、『XY』までの過去シリーズと『サン&ムーン』の良さを組み合わせたものではないかと感じています。
キャラデザが特に顕著で、『サン&ムーン』ほどコミカルではないものの『XY』ほどシャープではない、絶妙に『二作品の間』を狙っているのがわかります。
話の展開も、おおらかなサトシと繊細なゴウのバランス感覚がうまく生きて、ギャグもシリアスも熱いバトルもそれぞれいい温度感で展開しています。
これはつまり、『サン&ムーン』から『新無印』にかけて、『これから先のアニポケの行く道筋』を模索し、見定めたのではないでしょうか。
ヒロイン・コハルによる『女児向け』路線も
さらに今回目覚ましいのは、ヒロイン・コハルによる『女の子向け』な内容の充実です。
コハルは女児が憧れるようなまさに「優しいお姉さん」という感じのキャラクターで、その分け隔ての無いやさしさは敵であるロケット団のニャースまで惚れてしまうほど。
彼女と絡むポケモンも、ワンパチ、イーブイ、イーブイの各進化形たち、ガラルのポニータ等々、コハル回は屈指のかわいい系ポケモン目白押し!
それと並行し現実世界では、一般向け、子ども向けのかわいいポケモングッズや公式アプリが次々出て、
『新無印』発足と同じ2019年、ポケモン公式ベビーブランド『モンポケ』まで始動しました。
今まではポケモン(というかゲーム全般)というと、どちらかと言えば『男児向け』のイメージが強かったところを、『女児(女性)向け』にも力を入れ始めたのは明白です。
ポケモンは20年を超えたこれから先もさらに長く続くコンテンツとなるべく、新しい方向性へ向かい始めたのです。
過去キャラゲスト出演の度に、まるで…
また、過去キャラがよく出るとは先述しましたが、それもどこか今までの集大成のような雰囲気が漂うところがあります。
ヒカリは別世界のヒカリまで登場して一緒に世界を救うし、
今まで頑なに出さなかったセレナとの邂逅。
新主人公のライバルとしてのシゲルの登用。
ゲッコウガには新しいポケモン・ルカリオを紹介しに行き、
そして、前シリーズはおろか原作ゲームですら成しえなかったリーリエの父親との再会。
アローラ地方に出向いて、再びククイ博士やかつての仲間たちとのバトル―――と過去キャラ回の特別感は毎回最終回のようです。
#アニポケ ハイライト🎬
— アニメ「ポケットモンスター」公式 (@anipoke_PR) May 27, 2022
アローラの海と夕日を眺める
サトシとククイ博士✨
そこへ、なんとメレメレじまの守り神 #カプ・コケコ が現れました👀
仲間、自然、そしてポケモンたち、
みんなに背中を押されて、
サトシはマスターズトーナメントに向けて走り出します💪 pic.twitter.com/WoamNxVVU0
トレーナーとしても成長
新無印になって『ポケモンワールドチャンピオンシップス』に参加し始めた当初は、挫折からのスタートでした。
サイトウさんにコテンパンにされた後、何度も再戦を繰り返し、敗北→引き分け→勝利と成長していく姿は手に汗握るものがありましたし、
今では手持ちポケモンの布陣は歴代ポケモンも交えて厚く、
もう、サトシ編クライマックスとしてストーリーもバトルもこれ以上ないほどのお膳立ての連発です。
これでサトシ卒業でなければ、もうこれ以上の幕引きは無理ではないでしょうか?
まとめ
様々な挑戦を見せた『新無印』もいよいよ佳境。
サトシはチャンピオン・ダンテに勝利し、ポケモンマスターになれるのか?
主人公の座はどうなるのか?
ゴウとコハルの目標は今シリーズで達成されるのか?
最後まで目が離せませんね!