ワンピースといえば、言わずと知れた海賊王を目指す少年ルフィとその仲間たちの冒険を描いた少年漫画です。
1997年に週刊少年ジャンプにて連載が始まり、1999年よりテレビアニメ化して以降、その勢いはとどまることを知らず、20年以上も全力疾走し続けています。
しかし、このワンピース。連載5年を超えた頃からだんだんと…最終章が始まる2022年現在ではかなり大きな声で、とある不満を語られるようになってきました。
その不満とは、一言でまとめると「読みにくい」
最近では「最近のワンピースは読みにくい」「読むのが疲れる」とネット上で嘆かれるのがもはやネタとなりつつあります。
ワンピースの漫画は読みにくいのか?
アラバスタ編が終わる23巻が発売された2002年以降です。
話的にも、グランドラインに入って以降一緒に旅をしてきた仲間ビビが離脱し、入れ替わるように物語の深い所に関わるミステリアスなキャラクターロビンが加入。この辺りからガラッと作品の雰囲気が変わってきました。
この辺での「読みにくくなった」はどちらかというと、少年漫画らしいワクワクドキドキの冒険譚、というだけではなくなったことに寄る近寄りがたい雰囲気や、単純明快とは言えない難しい話や説明文が増えてきたこと等が強く影響している気がします。
明らかに何か裏のあるロビンを仲間に入れる、という緊張感も、ギャグ調で参入し、実は大義名分を背負ったお姫様だったビビとは正反対で、戸惑いもあったのでしょう。
しかし、その後段階を経て、確実に「読みにくい」と受け取られてしまう要素が増えていってしまいます。
ペンのタッチが変わる
(スラムダンクの)井上展に行ってきた。見習いたい
スラムダンクの井上雄彦先生と言えば、当時はバガボンドを描いており、筆のような強弱のあるメリハリの効いたタッチが印象的です。
それに影響を受けたのか、ワンピースは太い線で描かれるようになっていったそうです。
作者本人が理由として掲げたわけではないので推測の域を出ませんが、
井上先生はかなり写実的な絵柄を、時に細く繊細に、時に太く荒々しく、一本の線それぞれが躍動するように様々な表情を描く画風。
尾田先生のいい意味で漫画的でコミカルでディフォルメの上手な絵柄とは真逆ではないかと思いますが…
真逆な人に強い影響を受けることも当然ありますし、それ自体は素晴らしいことですが、今のワンピースの太い線と次で紹介する描き込みの多さは相性が悪いのではないか、という意見も見ます。
背景などの書き込みが増える
ワンピースが「読みにくい」と嘆かれる理由として一番にあげられる理由はこれでしょう。
2006年に描かれたCP9編頃から背景の密度が増し、2011年の魚人島編にはごちゃごちゃがピークに達します。
背景だけでなくセリフも多く、脇役もいちいち喋るし一コマ内の人口密度もすごいことになっていきます。
編集者の交代
一部では、この頃から担当ブレーキが効かなくなってしまったのではないか、と噂されています。
ただ、連載期間の長いワンピースは2022年8月現在の編集者ですでに13代目。
上記したベテラン編集者は8代目で、新人編集者は9代目です。
編集者の影響がそんなに大きいのなら、その後4回の世代交代のどこかで再びブレーキがかかりそうな気がします。
それとも、2011年の交代時に何かのタガが外れて戻らなくなったのでしょうか。
ワンピースは話の時系列がわかりにくい
これはルフィの仲間が複数人になった頃からのお約束展開ではあります。
しかし、話が進むにつれ味方キャラも敵キャラもそのエピソードオリジナルキャラもわんさか出てくるようになった今、行く先々でいろんなキャラや思惑や過去話が複雑に絡み合いもつれあって
「…で、結局何がどうなってるんだっけ?」
となってしまうことが増えてしまいました。
しかも、その周りを所狭しと取り巻くセリフや背景やキャラクターで埋め尽くされるのです。
情報が氾濫しすぎて取捨選択、整理が困難になってしまっています。
攻略本もない大昔のゲーマーは、新規ダンジョンは自分で地図を作製しながら(マッピング)プレイしたそうですが、
ワンピースの漫画は文字が多くてごちゃごちゃしがち
最も非難の的になりやすい書き込みの多さですが、前述したように作者はそれを自覚しているそうです。
ワンピースの書き込みすぎは意図的なもの
ワンピース研究家の神木健児氏はこのように語っています。
「尾田栄一郎先生は、かつてアシスタントを務めていた『ジャングルの王者ターちゃん』の徳弘正也先生から、“書き込みは伝わるんだぞ”と教わったことに影響を受けたこともあってか、10のことを伝えるのに100を書く、普通の漫画の3倍以上のエピソードを盛り込むのがご自身のテーマなどと過去のインタビューで明かされたことがあります。通常、漫画はメインとなる登場人物の感情や行動などを軸に物語が展開していきますが、『ONE PIECE』の場合はメインの登場人物はもちろん、例えばそれに対して街の人がどう感じたのかのリアクションや、仲間の同調、敵側の反対意見など、画面に映るものの全ての感情が描かれます。それら全てを描かないと、そのシチュエーションや時代背景を表現しきることはできないというのが、尾田先生の漫画家としての美学なんだと思います」
https://realsound.jp/book/2021/10/post-889364.html
しかしこれに対して『徳弘先生の言葉を曲解しすぎでは』と指摘する人もいます。
徳弘先生の漫画を読んできた人はわかると思いますが、尾田先生のこだわる『描きこみ』と徳弘先生のこだわる『描きこみ』は全然違います。
徳弘先生の書き込みは、必要に応じて背景や生物を細かく描いたり、ここぞという表情を丁寧に描いたりすることです。
むしろセリフや効果音すら描かず「絵だけで見せる」ことも多かったように記憶しています。
もちろん、人には得手不得手があり、持ち味があり、表現の仕方やこだわりは人それぞれです。
徳弘先生の『描きこみ』そのままワンピースに持ち込んで、それが『ワンピースとしてよくなる』わけではありません。
様々な人から影響を受けるのは当たり前ですが、その中から『どういう影響を』『どのように消化し』『どう表現するか』を取捨選択し身に着けられるのは、結局作者本人にしかできないのです。
連載物はやり直しができない
一冊で完結する小説などは、一度最後まで書き切ってからも熟考し、手直しを加え、完成させてから出版することができます。
書き上げた後で伏線をちりばめ治すことも、物語の始まりや順番を変えることも、必要なものを足し不必要なものを削ることも自由自在です。
しかし、現在出版されている漫画のほとんどが連載作品。
一話書き上げたら世に出さねばならず、世に出したからには大きな修正は基本的にできません。
唯一、コミックスにまとめるときにだけ多少の修正は叶いますが、先に雑誌で見た人にはその修正は明らかです。
インターネットの盛んな現代では、ワンピースほどの注目度の高い作品の修正箇所などあっという間に周知されてしまっているでしょう。
それに、毎週締め切りを迎える連載を抱えながらの修正など熟考する時間も取れないのではないでしょうか。
もしも重要な伏線を貼り損ねたら?
あのシーンでこういう箇所を少し入れておけば、この展開が引き立ったのに!
ワンピースほど長期連載になると、そのような不安や後悔をおそらく想像を絶するほど繰り返してきたのではないでしょうか。
連載が長くなれば長くなるほど、取り返しの効かないモノは増えていきます。
―――すべて描かないと、後から後悔する。
多くの不安や後悔と戦う術が、この『10のことを伝えるのに100を書く、普通の漫画の3倍以上のエピソードを盛り込む』という形になっていったのかもしれません。
多数の書き込みが苦手な人はアニメがおすすめ
しかし、読み手としてはあまりにも情報過多な作品は読みづらい、読むのが疲れる、と感じるのも無理ありません。
そんな人は電子書籍のカラー版がおススメです!
ごちゃごちゃピークの魚人島編もカラー版なら比較的わかりやすいと評判です。
そして、漫画版よりアニメ版がおススメです!
アニメは当たり前ですが、カラーな上に動くしセリフは喋ってくれ効果音は音として表現されますから、視覚情報のみに頼らず聴覚情報と分散されるため理解しやすくなりますよ!
まとめ
書き込みの多い理由は様々あるようですが、それでもなお魅力的であることも事実。
ワンピースのよさ、持ち味を失わず、最後まで描き切ってほしいものです。
途中で読まなくなったという人も久しぶりに漫画を読んだり、アニメで一気観したりしてみてください。