チェンソーマンは、二部再開とアニメ化が同時に発表され注目を浴びています。
しかし、評判を見ると「内容が難しい」「意味不明」という声も多く、様々なコメントや質問箱にはチェンソーマンにまつわる質問…というか「意味がわからない」と言う嘆きや苛立ちが数多くあります。
チェンソーマンは確かに多くを語らない漫画で、読者の解釈に任せる演出も多いのですが、実は「何がどうなっていたのか」を読み解く要素も多く描かれている作品です。
この記事では特に疑問を持たれている一部終盤を説明するために「マキマ」「アキと銃の悪魔」「最終決戦」を読み解きます。
※ 一部最終話まで読んでいること前提のネタバレだらけです。未読の方はご注意ください。
マキマ
チェンソーマンという物語、特に終盤を説明するためには、何はともあれマキマについて解説しなければなりません。
チェンソーマンという話の9割方、マキマの手のひらの上で踊らされていた、ということなので。
マキマの正体
マキマは支配の悪魔です。
姿かたちが人型から変わらないので魔人である可能性もゼロではありませんが、
総理大臣との契約により私への攻撃は適当な日本国民の病気や事故に変換されます
チェンソーマン 10巻
と言っていたので、恐らく総理大臣と契約している悪魔なのでしょう。
能力
支配の悪魔の能力は、自分よりも下の存在を支配すること。
『下の存在』とはあくまでもマキマ自身が「自分よりも下」と認識さえすれば支配できるようです。
能力発動スイッチは、命令すること。
「これは命令です」と言ってしまえば、かなり無茶なこともできてしまいます。
大事な人たちを手にかけることもできますし、
記憶を支配すれば強制的に忘れさせることもできますし、
感情(愛情)を支配すれば、自分に好感を持たせたり溺愛させることすらできます。
自我を失うほど支配すれば、悪魔の能力を行使することも、支配した人間が契約する悪魔の能力を(契約者自身に対価を支払わせて)行使することも自由自在です。
心優しい天使くんが無気力非協力的だったのは、記憶を支配(消去)されても、感情は支配されておらず宙ぶらりんだったからかもしれません。
神社で披露した能力は何だったのか
初期に神社で終身刑以上の囚人たちの命と引き換えに敵を圧死させる能力を使いましたが、これは支配した契約者経由で悪魔の能力を行使したのではないかと考えられます。
悪魔自身を支配したわけではないので、能力行使に対価が必要だったのでしょう。
その場所として標高の高い神社を求めた理由はわかっていません。
「悪魔と契約した人間だから、なんらかの条件が必要」と思わせるための演出ではないか、等と考察されています。
行動理由
「チェンソーマンを使って世界をよりよくしたい」と本人は名言しています。
チェンソーマンには他の悪魔に無い特殊能力があります。
チェンソーマンに食べられた悪魔の名を冠する存在が消滅するのです。
チェンソーマンが悪魔を食べたことにより、チェンソーマンの世界ではエイズや第二次世界大戦、核兵器等が存在しなくなり、人々の記憶からも抹消されたとされます。
ロシアがソ連呼びなのも、核兵器事態が無かったことになった影響だと考えられます。
マキマはこの能力で、まだ人間を不幸にする『死』『戦争』『飢餓』なども抹消しようとしていました。
最低最悪の平和
チェンソーマンとの最後の戦いの前に、「面白くない映画は無くなった方が良い」とマキマが答え、それを受けたデンジが「殺すしかねーな」となりました。
ここにアメリカの大統領が言った「マキマの作る最悪の平和」が垣間見えます。
マキマさんは、自分が必要と思うもの以外を全て抹消したいわけです。
自分の価値基準だけが絶対であり、そこから外れるものは否定し拒絶する。
多様性など全くない、マキマの定めた平和から微塵も身動きの取れない世界。それがマキマの作る最悪の平和です。
自由の国アメリカの大統領はそれを認めるわけにはいきませんでした。
デンジもまた、どんなにマキマのことが好きであっても、多様性のない平和を受け入れることはできなかったのです。
真意
上記した行動理由も嘘ではありませんが、彼女の真意は別にあります。
チェンソーマン限界オタク
地獄でのチェンソーマンは災害じみたヒーローでした。
悪魔の中でも復活力が桁違いで、何度でも蘇る。
助けを呼べば、加害者だけでなく助けを読んだ本人まで全て殺して去っていく。
あまりにも圧倒的な存在を、ある者は恐れ、ある者は崇拝しました。
鮫の魔人ビームも崇拝者の一人だったのでしょう。
しかし、マキマはもっと末期の…言うならば限界オタクでした。
「チェンソーマンを倒せば自分より下の存在と認識でき、支配できる」と話しながら、逆に自分が倒される可能性すら「彼の一部になれるのなら光栄」と言い切れてしまうくらい末期です。
チェンソーマンをよみがえらせ戦えるのであれば、勝っても負けてもマキマにとっては本望だったわけです。
ポチタが見透かした真意
ポチタは、さらに別の真意を見抜いていました。
支配の悪魔はずっと「他者との対等な関係を築きたかった」のだと。
4課との飲み会の翌日「昨日のお酒美味しかった…」とつぶやいたり、
デンジを(幸福感を与えるために)デートに誘っておきながら、自分だけが楽しい映画ハシゴに一日中ひっぱり回したり、
その挙句「映画に人生を変えられた」と語って、最後の映画の抱き合うシーンに涙を流したり、
ふいに垣間見える人間じみた言動の根元にこの夢が関係しているのかもしれません。
もしかしたらマキマは、10本に1本の映画に「他者との対等な関係を築きたい」という気持ちを芽生えさせられた、もしくは自覚させられたのかもしれませんね。
マキマのシナリオ
チェンソーマン(一部)の話は、言ってしまえばマキマがチェンソーマンを(殺すにせよ殺されるにせよ)手に入れるために仕立て上げた一大ドラマでした。
総理大臣と契約し、公安のデビルハンターに属していたのは、恐らくはチェンソーマンを探すためでもあったのでしょう。
チェンソーマンが弱体化しポチタになっていたのも、マキマに追いつめられていたからではないか、という説があります。
ポチタたちの契約破棄を狙う
しかし、ようやく見つけた愛しのチェンソーマンはデンジの心臓になっており、デンジは魔人とはならず自我を残して武器人間となっていました。
出会い頭に血みどろで意識朦朧のデンジが「抱かせて…」と言ったら優しく抱きしめてくれたの、ようやくチェンソーマンに出会えたからだったんですね…
ポチタとデンジの契約内容は「ポチタの心臓をあげる代わりに(デンジの)夢を見せてほしい」ということ。
ホームレスというのもはばかられるほど悲惨な生活をしながら、デンジはポチタにいつも普通の生活を送る夢を話していました。
デンジはポチタと「普通に幸せな生活を送る」契約をしたのです。
悪魔と人間の契約は絶対です。契約が果たされなくなったら、デンジとポチタの関係性…デンジの自我を残したチェンソーマンという存在が崩壊し、デンジの代わりにチェンソーマンが現れます。
マキマはチェンソーマンを出現させるためにその契約の崩壊を狙って、まずポチタとの底辺生活にすら幸せを見出せるようなデンジに「普通の幸せ」を与えました。
壊すために作り与えた
疑似家族を形成するために兄役のアキと妹役のパワーを与え、自分に恋愛感情を向けさせ、途方に暮れる度に励ましてくれたのもすべてはデンジに幸せを教えるため。
マキマさんがアキ・デンジ・パワーの3人を「早川家」と読んでいたのも、家族観を与えるためだったのでしょう。
銃の悪魔の肉片を持つ悪魔が頻発したのも、もしかしたらデンジに実績と達成感を与えるためマキマが仕組んだのかもしれません。
あんなに簡単に仕留められるのにレゼを泳がせていたのも、デンジに隠れて始末したのも、デンジに年相応の青春を味合わせてあげる&自分の手駒を増やすという一石二鳥を狙ったのかも…
とにかく、あれもこれもマキマが知らなかったわけが無いので、全てが彼女のシナリオ通りに事が運んでしまっていたのだろうと考えられます。
メディアにリークさせたのも…
チェンソーマンがメディアにとりあげられ、一躍有名人となり世界各国から狙われることとなりましたが、
最終決戦の展開を考えると、これすら人間に受け入れられることでチェンソーマンの弱体化を狙っていたマキマの策略の可能性があります。
アキが銃の悪魔の魔人になった理由
アキが銃の魔人になった経緯がわからない、という声も多いですね。
漫画で描かれたのは、天使の悪魔の故郷である廃村の海辺で、アキと天使の悪魔を完全に支配し、他に支配するデビルハンターや悪魔たちを繰り出して銃の悪魔と交戦するところまで。
マキマvs銃の悪魔の後半は描かれず、次のシーンではもう、銃の魔人がデンジの家のチャイムを鳴らしていました。
この空白の間に何があったのでしょう。
アキはすでに死亡
マキマはアキと「早川君のすべてをくれるなら」と言う条件で契約しました。
すべて…この時にもう命まで奪ったということでしょうか。
3時18分26秒
マキマ能力発動準備
チェンソーマン 9巻
のページにある死亡者リストに早川アキの名があり、能力発動時に「早川アキの生前契約悪魔「未来の悪魔」」とあるので、銃の悪魔迎撃直前に早川アキはすでに死亡しています。
死亡者+悪魔=魔人
悪魔が死体を乗っ取ったということは、早川アキは銃の魔人になってしまったということでしょう。
それなのに印象的なのは、銃の魔人となってもアキのかなり明確な心理描写があったこと。
登場人物が子どもとして描かれ、戦闘が雪合戦に変換されていますが、それは認知がかなり歪んではいるものの、歪んでいるなりの状況把握をしているということです。
それに、場所を知っているかのように目立つトラブルを起こさずにマキマから遠く離れた早川家の部屋を訪れ、人間の様にピンポン連打し、ドアを開けてもらうまで待っていました。
通りすがるだけで大量殺戮する銃の悪魔が、魔人になった=弱体化したとはいえあんなにスマートに早川家の部屋を訪れられるのはおかしいでしょう。
魔人は普通、自我は悪魔ですが、暴力の悪魔のように「人間の脳が残っているため、人の時の記憶も少しある」という例も稀にあります。
人の時の記憶と自我がどれくらい残るのかは、人間の脳がどれくらい残っているか(もしくは残っている脳の部位)によるのかもしれません。
これは―――銃の魔人となったアキが確実にデンジと戦闘し、アキらしさをあえて匂わせてデンジへの心理攻撃をより濃厚にしようと(実際デンジは「アキに戻れ」と何度も叫んでいました)、支配の悪魔があえてアキの脳を少し残させたのではないでしょうか。
もしかしたらこのときには、銃の悪魔も支配の悪魔の支配下だったのかもしれません。
かすかに残ったアキの自我が、家に帰り、チャイムを鳴らしてもなかなかデンジたちが開けてくれず不思議がっていたのかと思うと、胸が締め付けられます。
チェンソーマンVSマキマ
マキマの策略にハマって絶望しポチタとの契約破棄をしてしまったデンジは、チェンソーマンに身体を乗っ取られます。
つまり、外見が変わり、雄たけびをあげ暴れまわっていたのは、デンジではなくポチタ(=本来のチェンソーマン)です。
ハンバーガーを食べ、デートをする
ひとしきり暴れたかと思うと、チェンソーマンはデンジの昔語った夢を思い出し、それを実現しようとします。
何故そんなことをしようとしたのでしょうか?
それはおそらく、デンジの夢を実現させることで、もう一度デンジに希望を持たせ、夢を見てほしかったのではないでしょうか。
再契約を願ったのではないでしょうか。
覚醒して激しい興奮状態だったようですが、その目的を目指しだしてからはだんだん落ち着きを見せます。
ポチタにとってデンジの夢はそれだけ宝物だったのでしょう。
岸辺とコベニを攻撃しなかったのは何故か
これも、この時のチェンソーマンがポチタだと考えれば合点がいきます。
デンジにとって大事な仲間を傷つけるわけにはいかなかったのです。
ファミリーバーガーの店員たちは次々と血祭りにあげてしまいましたが、これはまだ覚醒直後の興奮が冷めきっていなかったのと、コベニにパワハラ=敵と認識してしまったのではないかと考えられます。
パワーの復活と死
パワーが地獄の悪魔に寄るPTSDで激しい分離不安を訴えていた時、話の流れでデンジがパワーの血を吸うことになりました。
この時に吸った血が元で、パワーが一度復活します。
デンジの体内でポチタがパワー(の血)にポチタの血を与えて強化、パワーは完全体でデンジの身体から元気に飛び出しました。
随分トンデモな展開ですが、パワーが血の悪魔だからこそできた芸当なのでしょう。
最終的にはマキマの刺客たちに殺されますが、瀕死の状態でも最後までデンジと逃げ、デンジに血を与えてパワーとしての生涯を終えます。
マキマとの再戦
岸辺には逃げるよう促されますが、デンジは一計を案じてマキマと再戦します。
しかし、肉弾戦でもマキマの圧勝。マキマさん強すぎ怖い。すみません、本音が漏れました。
ついにはチェンソーマンの身体からポチタの心臓を引きちぎり、勝利宣言をします。
チェンソーマン これで貴方は私のモノ これからはずっと一緒です
一緒にたくさん食べて寝て 幸せな生活をしましょう
チェンソーマン 11巻
心臓にうっとりと頬を寄せるマキマ。
その油断した背後に突如現れたデンジが、チェンソーで致命傷を与えます。
ポチタとデンジの分離
実はマキマと再戦したのはデンジの身体から分離したポチタで、心臓(ポチタ)を抜いたデンジはパワーの血で延命しながら隠れていたのです。
マキマは嗅覚で判別していた
デンジが気づいたマキマの特徴は、視覚より嗅覚で人を判別しているというものでした。
そして、デンジ自身には興味ゼロでチェンソーマンのにおいしか追ってこなかっただろうから、ポチタと分離しても隠れていればデンジのにおいに気づくことはない(そもそも覚えていない)だろう、と。
恋する少年にとってはあまりにも皮肉な賭けに出たのです。
そういえば、小動物を通してあらゆる物事を聞いているのに、筆談だとばれないという特徴もありました。
マキマは視覚が人間よりはるかに劣っていたのかもしれません。
マキマの吹き出しの先は、口元ではなく目元を指しているときがある(目元から声が出ているように見える)、という指摘もありました。気づいた人はすごいですね!
パワーの血が切り札
マキマに切りつけたチェンソーもまた、パワーの血で作られたものでした。
そのため、マキマの切り傷はパワーの血が暴れて再生を阻害し続けます。
普通の刃物ではなくチェンソーを選んだのは、切り口をガタガタにしながら速やかに切断できるからかもしれません。
…もしかして、この最終決戦のために主人公をチェンソーにし、バディを血の悪魔にしたのでしょうか。
マキマ消滅
デンジの勝利宣言で一時閉幕。次はすでにデンジの部屋で岸辺と話すシーンに移ってしまいました。
パワーの血で切断
漫画では描かれませんでしたが、マキマに勝つ条件が、まずパワーの血で細切れにすること。
上述したようにパワーの血で傷つけると再生速度が著しく遅くなるので、速やかに細切れにすれば戦闘どころか行動不能状態にまで持ち込めます。
念には念を入れ、複数の密閉容器に分けて詰め、その上からパワーの血で縛って実質再生不能状態にまでさせることに成功しました。
デンジの部屋の冷蔵庫の中身は、この地道なマキマ封印(物理)の結果です。
デンジが完食
しかしこのままではマキマの切り口をパワーの血が傷つけ続けている状態なので、日本国民が傷つき続けます。
かといってこれを燃やしたり溶かしたりして『攻撃』してしまえば、日本国民を殺してマキマが再生するだけ。
そこでデンジは、攻撃ではない方法でマキマを物理的に消滅させるため、
愛を持ってマキマを想いながら(=攻撃ではない)マキマを(食べて)消化することにしました。
こんなことができてしまうのは、全世界を探してもデンジだけでしょう。
つまり、デンジ&パワーのバディでマキマに勝利したということです!
まとめ
チェンソーマンを最後まで読んだ人たちの多くに「わからない」と嘆かれていたポイントを解説してみました。
これで少なくとも話の大筋は掴めたのではないでしょうか。
大筋さえ把握していれば、読み返すたびに発見のある作品だと思います。
もちろん、雰囲気が合うのであれば『雰囲気漫画』として楽しむのもアリです!
自分なりのチェンソーマンの解釈を見つけてみてください。